Varèse Technical Explanation / dCS

Varèse Technical Explanation(技術解説)

dCS Ring DACの固有の音質は、最先端技術を応用して極めて低歪みであり、特に低信号レベルにおいてさえも、他のDACの大半が及ばない領域に及んでいます。

しかし、エンジニアリングのすべての範疇で起こり得ることですが、犠牲にするものがあってこそ得られるものがある、という事実があります。この例外的な歪み性能のトレードオフは、このDAC構成が、ラダーDACのような動作の遅いアーキテクチャよりもノイズを発生させる可能性があるということです。人間の耳は、劣ったDACが作り出すような音楽信号と相関性のある人工的な高調波成分よりも、ランダムなノイズを好むので、単独に考えても、これは非常に良いトレードオフです。実際のところ、Ring DACが提供する残留ノイズのレベルは驚くほど低く、大半のノイズは可聴周波数帯域外にあるため、DAC出力の穏やかなアナログ・フィルターで簡単に除去することができます。

「Varèse」システムの設計は、DACの性能をさらに高めるという目標から始まりました。その結果、Vivaldiシリーズに代表される画期的な第3世代の製品から前進し、まったく新しいDAC構造が採用されました。これは、dCSがオーディオ製品を製造してきた歴史の中で、Ring DACの実装における最大の転換となったのです。そこから、これらのDACが、クロックやアップサンプラーなどとの相互接続といった、長年にわたってDACの性能をある程度制限したと考えられるような側面に成約されることなく、可能な限り最高レベルで動作するdCS独自の新技術が生み出されました。

Varèse Mono DACs & the Differential Ring DAC

第3世代のRing DAC(APEXのバリエーションを含む)では、Ring DACは96個の電流源(左チャンネル用48個、右チャンネル用48個)で構成され、それぞれが同量の電圧を発生し、これらの電流源に含まれる部品誤差(抵抗値の公差)をランダムノイズとして分散するように動作します。合計96個の電流源は、DAC内のひとつのRingDACボード上に配置され、左右のチャンネルはボード上で分離されています。

「Varèse」では、左右のチャンネルが 「Mono DAC 」に分離され、各オーディオ・チャンネルごとにDACユニット全体が配置されています。これによって、一般的なエンジニアリングの改善に加えてdCS独自の技術も飛躍的に進歩することができました。

「Varèse Mono DAC」には、各オーディオ・チャンネルに第3世代の製品で使用されている2倍の96個のカレントソース(電流源)装備されています。これらのカレントソースには、5.644MHzまたは6.144MHzに同期変調された5ビットのPCM信号が供給されます。(ソース・コンテンツのサンプリングレートによりますが) 

「Varèse」のRing DACは差動アーキテクチャで動作します。Ring DACボード上の96個の電流源は48個ずつふたつのグループに分けられ、ひとつのグループは音楽信号を正相で再生し、48個の電流源の2番目のグループは信号を逆位相で再生します。この2組のカレントソースの出力は差動され、逆位相のカレントソースの位相が反転され、同位相の電流源と合計されます。リングDACをこの差動方式で動作させることで、優れた性能の第3世代リングDACと比較してもなお多くの性能向上がもたらされました。

1. リファレンス電源に流れる電流のバランスをとります。リファレンス電源とは、カレントソースに供給される電圧のことで、電流源がいくつオンになっていても、その電圧は掛け算されます。Ringの正相側が高電圧で、コールド側が低電圧です。このことは、両方の電流源がコンプリメンタリ動作をするため、基準電源の消費電力が信号に依存しないことを意味します。これにより、RingDAC内で2次高調波が発生するメカニズムが取り除かれ、歪み性能が向上します。

2. Ring DAC内の2次高調波性能を改善。特定のデジタル・オーディオ・サンプルに対してRing DACのどの電流源がオン/オフになるかを決定するマッピング・アルゴリズムでは、正と負のハーフ・サイクル(正と負のハーフ・サイクルとは、Ring DACが出力でそれぞれ正電圧または負電圧を再生しているときを意味します)で電流源から発生するスイッチング・ノイズの量が異なります。ふたつの逆位相リングでの差動動作は、信号の両方のハーフサイクルにわたってこの非対称性を均等化し、よりリニアな性能をもたらします。

3. 各サミング・ノード(総和、加算する)のオフセットを等しくするので、はっきりとしたDCオフセット補正が不要になり、同時にサミング/フィルター回路の対称性が向上します。   現在のdCS DACがD/A変換プロセスの異なる側面を実行するために複数のボードを利用しているのに対し、「Varèse Mono DAC」では、すべての処理とアナログ機能を実行する単一のオールインワン ボードを装備しています。 これは、設計上の多くの側面を改善し、「Varèse Mono DAC」の性能の一貫性を向上させます。オールインワン・ボードはLina DACで採用した技術で、その結果、製品性能の一貫性が向上した点がメリットと判明したため、「Varèse」に採用しました。

「Varèse」では、それぞれが差動Ring DACという構成にして、デュアルモノDACに仕上げるというアプローチによって、既に低歪みのdCSの優れたDACの音質をまったく新しいパフォーマンスレベルへと高め、同時にノイズフロアレベルを3dBほどさらに低下させることができました。リングDAC  APEXはすでにデジタルからアナログへの変換技術の最前線に位置していますが、「Varèse Differential (差動)RingDAC」は、他のDACとのスペックや音質に比較すると、dCSの優位性は際立って大きくなったと自負できるものになりました。

Power Supply

Ring DACは「乗算DAC」であると定義されます。すべてのカレントソース電流源に供給される基準電圧を受け取り、それにコード(Mapperを通して供給されるデジタル・オーディオ・サンプル)を掛け合わせます。電流源に供給される基準電圧が完全にクリーンなDC電圧から変動する場合、──例えば基準電圧に干渉がある場合──、この干渉や変動は、その時点でオンになっている電流源の数だけ出力に乗算されます。つまり、DAC内部の基準電圧はシステム・パフォーマンスにとって極めて重要なのです。留意するべき大切な点は、どんなに優れた設計の電源であっても、それが駆動している回路の影響からは完全に分離できないという点です。しかし、明瞭で透明なRing DACのような構成では、細部は音楽再現にはとても大切ということです

既存のdCS DAC、即ちステレオ・Ring DAC構成では、左チャンネルと右チャンネルの電流源は、ほとんどの場合、異なる信号を再生することになります(左チャンネルと右チャンネルが同一であるモノラル・レコーディングは、ほぼ唯一の例外です)。つまり、左チャンネルと右チャンネルの電流源を比較すると、異なる数の電流源が異なるタイミングでオン・オフされることになります。電流源がオン・オフすると、リファレンス電源に対するインピーダンスが変化し、リファレンス電源にリップル効果を引き起こす可能性が出てきます。

前述の、電源オン・オフによって起こる基準電源に対するインピーダンスの変化に起因する電源のリップル効果は、すべての動作している電流源を通じて乗算され、システムの音質に影響を与えます。APEXは、リファレンス電源をRing DACの電流源に供給する信号経路のインピーダンスを下げることで、電流源のスイッチングとリファレンス電源の間のこのような相互作用に対する影響に対しての強靱な防御力を備えたシステムにすることによって、これを改善しました。

「Varèse差動Ring DAC」の設計では、正位相と逆位相の電流源は、両方の電流源のセットが同じ音楽信号を再生し、一方のセットでは位相が反転しているため、互いに(信号用語で)同じように動作します。さらに、前述したように、各モノーラル DAC内部の二組の電流源は同じ信号を再生しますが、位相が反転しているため、基準電圧の引き込みは二組で均等化されます。これは、Ring DACのような乗算DACにとって、音楽的パフォーマンスに大きな意味を持つ基準電圧が非常に安定した動作を継続する、ということを意味します。

Varèseシステムの電源を構成するハードウェアは、現行のdCS製品と比べても改良されています。

- RossiniとVivaldiのDACは2台のメイントランスを搭載しており、DACのアナログとデジタルの各要素の電源は別々のトランスから供給され、DACの音質的なパフォーマンスを向上させています。「Varèse モノーラルDAC」も2台のトランスを搭載していますが、それぞれのトランスはアナログまたはデジタル電源での使用に最適化されており、モノーラルDACのアナログとデジタル両方のパフォーマンスを向上させています。

- 電源の2次側回路は、トランス・コアの磁気歪みを低減し、トランスが発生させる機械的なハムノイズを低減するように新たに設計されたトランスです。

- 電源レギュレーターは異なるトポロジーを採用し、電源シーケンシングは電源管理ICによって実現され、高次元で電源の起動と停止を厳格かつ柔軟に制御します。

- バランス出力段のアナログ電源には、追加レベルのレギュレーションが用意され、出力のコモンモード・ノイズをさらに低減し、アナログ性能の向上に寄与しています。

ACTUS

理想的な音楽システムでは、各コンポーネントがシステム内の他のコンポーネントと「やりとり」することができ、重要な情報やコマンドを各コンポーネント間で送信することができます。Vivaldiでは、DACとトランスポートをアップサンプラーに接続する3ウェイRS232インターコネクトと、デュアルAES接続のふたつの主要メカニズムによってこれを実現しています。RS232接続を利用し、DACからUpsamplerへ、TransportからUpsamplerへ、Dual AES接続に組み込まれたトンネルコマンドを送信することで、Vivaldiシステムは各ユニットの設定、ボリュームコントロール、ソースの変更などをシームレスにコントロールすることができます。オーディオ信号はDual AES接続によって同期して送られます。

「Varèse」には究極の音質を実現するために、dCSが開発したdCS独自のインターフェイスが搭載されており、ユーザーによるシステム全体のシームレスなコントロールが可能です。

このインターフェースは「ACTUS(Audio Control and Timing Unified System)」と呼ばれています。「ACTUS」は、dCS独自のハードウェアとソフトウェアの組み合わせによって構成され、各ユニット(コア、ユーザーインターフェース、クロック、モノラルDAC)間をたった1本のケーブルで接続します。インターフェイスには、非同期&エラー補正デジタルオーディオ、コントロール信号、マスタークロック信号(特許取得済みのTomixクロック技術により送信)が含まれます。

「Varèseコア」はシステムのハブとして機能し、他のVarèseユニットは「ACTUSケーブル」によって接続されます。ACTUSケーブルとVarèseユニットに使用されているコネクターはdCSの特注品です。コネクターはキー付きで、正しい方向にしか差し込むことができません。つまり、同じケーブルをVarèse・ユーザーインターフェースとCore、Coreとモノーラル DAC間はどちらでも共有できるケーブルです。このため、ACTUSケーブルを使用したVarèseシステムのセットアップは驚くほど簡単です。「ACTUSインターフェイス」のための唯一の特定の要件は、「Varèseマスタークロック」は「Varèseコア」の「ACTUSソケット(Clockとラベルされている)」に接続する必要があるだけです。

ACTUSケーブルは6対の銅線ケーブルで構成され、それぞれは以下の役割を持っています:

- 1対のツイストペアは44.1kHzのTomix信号を伝送します。

- 1対のツイストペアが48kHzのTomix信号を伝送

- 4対のツイストペアがIP(インターネット・プロトコル)リンクを形成します。

IPリンクは各VarèseユニットをVarèseコアに接続します。このIPリンクは、システムを完全にコントロールすることができます。情報、設定変更、およびRS232などの追加のコントロール・インタフェースを必要とせずにユニット間でシームレスに送信される他の制御情報を可能にします。

このレベルの制御は、例えば、システムがインテリジェントに左モノーラルDACが正しくない、クロックがCoreの間違ったACTUSポートに接続されている、等という誤用などをユーザーに知らせることも可能で、システムの障害を見つけるためにも非常に便利です。

IPリンクはVarèseユニット間のオーディオ信号伝送も担当します。AES3やS/PDIFのような非同期インターフェースを使用する代わりに、ACTUSは非同期エラー修正インターフェースを介してオーディオを送信するためにIPを利用します。ACTUSは、AES67のような、IP経由でオーディオを送信するための確立された業界標準を使用してはいないことに注意してください。(TOMIXの項で後述します)

Varèse CoreとモノーラルDACプロセッシング

dCSフラッグシップ・システムでは、オーバーサンプリング・プロセスの一部として必要なデジタル/デジタル変換、フィルタリング、DSPの大部分を実行するDACの外付けユニット、アップサンプラーを使用するのが一般的でした。これは、DACとは別の外付けユニットにこの処理の大部分をオフロードすることで、パフォーマンスの向上に大幅に寄与することが、プロ用機器を提供した経験から判明し、それをオーディオ機器に反映したということです

これらの要素の大部分を処理する作業は、Varèse Coreが行い、DACをデジタルワークロードの大部分から切り離します。つまり、DACの内部にあるFPGAは、実行されるオペレーションが少ないため、より少ない作業で済むことになります。これは、電源のマイクロドレイン(連続的に流れるわずかな電流)が少なく、モノーラル DACの性能がさらに向上することを意味します。

Varèse Coreは、入力されたPCMソースを705.6kS/sまたは768kS/sにオーバーサンプリングし、ナイキスト・イメージを除去するために信号をデジタル・フィルタリングします。PCMソースを再生する際、ユーザーはオプションでDSDモードを選択することもできます。このモードは、この信号をDSD(標準DSD/64からDSD/512まで)に変換します。このオーバーサンプリングされ、フィルター処理されたデジタル・オーディオ信号は、ACTUSを介してモノーラル DACに送られ、そこでRing DACに供給される5ビット~6MHz信号に変調されます。

Varèse モノーラル DACからDSPをさらに取り除き、その代わりにVarèseコア自身で処理を行うことにより、Varèse モノーラル DACの作業は軽減され、その性能はさらに高めまります。

Mono DAC clocking

モノーラルDACの動作は、クロッキングに関してかなりユニークな課題でした。ステレオDACを搭載した従来のデジタル・オーディオ・システムでは、DACの内部にクロック信号を生成する回路があります。

このクロック信号は、左右両方のDACチャンネルに同時に供給され、両方のチャンネルがデジタル・オーディオ・サンプルを同時にアナログ電圧に変換することになります。しかし、モノーラルDACを動作させる場合、DACの回路はすべて左右のチャンネルに分割されます。それぞれに対処する作業があり、それらは電源、DAC回路、そしてここで重要なのはクロック回路が含まれていることです。

モノーラルDACでは、ふたつのDACが同時にオーディオサンプルを変換する必要があります。もしDACが左右のチャンネルのサンプルを異なるタイミングで変換すると、左右のオーディオチャンネル間に時間遅延が生じるため、オーディオ品質が許容できないほど著しく低下します。サンプルが同時に変換されるようにするには、両方のDACのクロック信号の立ち上がりエッジ(クロック信号を構成する矩形波の変化で、電圧が0Vのような低い状態から5Vのような高い状態に変化すること)が、左DACと右DACとで時間的に一致していることを確認する必要があります。

しかし、これだけでは十分ではないのです。左右のDACをまたぐふたつのクロック信号の立ち上がりエッジが完全に揃っていたとしても、例えば左DACが右DACより1サンプル先に動作している可能性もあるでしょう。この場合、DACは同時にサンプルを変換していますが、それぞれが同じサンプルを変換しているわけではありません。

この場合も、システムの音質を損なうことになります。そのため、ふたつのDACのクロッキングは、両方のクロックが同じタイミングで立ち上がり、エッジを生成し、この同期したクロック信号で同じサンプルを変換するように、厳密に整合させる必要があります。

現在オーディオ業界には、この問題に対処するための解決策があります。そのひとつは、デバイスを同期させるために、従来のAES / SPDIF信号を利用することができますが、そのような信号はVarèseで必要な方法で動作するための帯域幅を持っていません。

AES67は、必要な帯域幅を持ち、左右のDACを同期させるという問題に対処する別の選択肢を提示します。ここでの問題は、AES67はタイムサーバーを必要とし、インターフェースはネットワーククロックからクロックを再構築することです。そのため、このクロック信号は、DAC内部のオーディオ・レート水晶発振器を使用して生成された物理的なクロック装置によってローカルに生成されたものと同程度のものにはなり得ません。

この問題から、dCSはふたつの別々の製品のクロックを厳密に同期させる新しい方法を開発する必要があると判断しました。同時に、それぞれのDACに内蔵されたローカルの高品質VCXOベースのクロック回路を利用して、それぞれのRing DAC回路をコントロールし、システムのパフォーマンスを最大化する必要がありました。

こうしてdCSが作りあげた解決策を、「Tomix」と呼びます。

Tomix

「Tomix」は、Varèseシステムで使用されるモノラルDACのクロック同期の問題に対する、dCSによって開発された特許取得済みの方策です。ここでは、Varèseコアは、従来のオーディオシステムのマスタークロックとほぼ同じように動作します。それは、DACのクロックが平均して同じレートで実行されることを保証し、それらが同期するモノーラルDACの両方にクロック信号を供給します。しかし、これだけではD/A変換を同期させるという問題を解決することはできません。

CoreはVarèseシステムのハブであり、すべてのオーディオ信号とクロック信号は、ソース、システム構成や設定に関係なく、常にコアを通過します。Coreは、サンプルがACTUSを介してDACに送信される前に、それを通過する各オーディオサンプルにタイムスタンプを追加します。

サンプルがDACに到着すると、DACのFPGAにタイムスタンプが表示されます。DACは、サンプルがいつ送信されたかを正確に知ることができますが、正しい時刻にサンプルをアナログ変換するためには、現在の時刻も正確に知る必要があるのです。

そこで「Tomix」の出番となります。前述したように、プロセッサーからDACに供給されるクロック信号の立ち上がりエッジを揃えるだけでは不十分で、DACは同じ立ち上がりエッジを利用する必要があります。これを実現するため、「Tomix」は時間的に確定的であるのです。つまり、クロック信号自体がタイムスタンプされ、このタイムスタンプによって、DACはシステム全体のレイテンシー(遅延時間)を理解し、適合させて、出力を揃えることができるのです。

クロック信号がタイムスタンプされる方法は、オーディオ性能にとって非常に重要です。DACは、元のクロック信号を完璧に復元し、タイムスタンプ情報も復元できることが必要で、DACに有害なレベルのノイズや干渉をもたらすことなく復元しなくてはなりません。Tomix信号は、Varèse Master Clockによって生成されるか、システムでMaster Clockが使用されない場合は、Varèse Coreによって生成されます。

Tomixの場合、クロック信号のベース周波数は2倍になります。つまり、44.1k㎐のクロック信号の例は、2倍の88.2k㎐になります。Tomixクロック信号の立ち上がりエッジは、DACがクロック・リカバリーに使用するため、変更されません。Tomixクロック信号の立ち下がりエッジはタイムスタンプ情報でエンコードされます。これは、信号のパルス幅を狭めるか広げるかして、Tomix信号の立ち下がりエッジを検出ポイント(Tomix信号と同じ周波数だが位相が180度ずれている)の前後に持ってくることで行われる。

立ち下がりエッジが検出ポイントより前であれば、DACはTomix信号から0をリカバーする。立ち下がりエッジが検出ポイントの後であれば、DAC はTomix 信号から1を復元します。

復元されたビットストリームは、DACによって、復元されたクロック信号にタイムスタンプを付与するために使用され、DACの厳密な同期を可能にします。クロック信号にエンコードされたタイムスタンプ情報を送信するだけでは、データにパターンと相関が生じ、Tomix信号によって生成された電気ノイズがDACで問題となってしまいます。

下のグラフはふたつのトレースを示しています。赤は、タイムスタンプデータが単純にリニアカウンタであり、上記のように立ち上がりエッジにエンコードされている場合で、Tomixクロック信号によって生成されるノイズです。例えば、立ち上がりエッジは1、2、3、4...とタイムスタンプされます。緑色のトレースは、タイムスタンプ・データがTomixで使用されているカウンターの種類に基づいたカウンターによってカウンターベースとなった場合に発生するノイズを示しています。

上記のグラフは、これらの効果の聴感上の影響を説明するには不十分です。グラフからわかるように、リニア・カウンター(赤いトレース)は一連の不連続的な周波数成分を生成します。赤いトレースは 可聴帯域の大部分で緑のトレースより上にあり、ランダム・ノイズのようには振る舞いません。したがって、これはVarèse モノーラルDAC内のオーディオ回路に干渉し、パフォーマンスを低下させます。

ナンバー・ジェネレーターは、オーディオ帯域内に離散的な周波数成分を含まない、注意深く制御された周波数スペクトルを持つ必要があります。一方、決定論的*なタイミング・データを伝送することもできます。この目的のために、Tomixでは特殊なカウンターが使用されています。このカウンターは、出力数が有限であるため繰り返し可能なデータ・ストリームを生成し、これらがすべて実行されると再起動しますが、データは十分にランダムであるため、結果として生じるノイズはリニア・カウンターが生成する周期的なノイズと比較すると非相関的で直線的(リニアー)に広がります。

この結果、Tomix (dCSの特許技術)により、Varèse モノーラル DACは厳密に同期されたクロックを持つことになり、モノーラル Ring DACが同じオーディオ・サンプルの左チャンネルと右チャンネルを正確に同時に変換することができるのです。これは、各モノーラルDAC内部の専用クロック回路を使用してそれぞれのRing DAC回路を制御しながらも実現します。dCS固有の高いクロッキング性能を維持し、チャンネル間の優れたタイムアライメントを維持しながら、モノーラル DACを利用するVarèseシステムはTomixによって可能になったのです。

*端末から宛先ノードまで信号伝達に要する遅延時間が確定できる、という意味:deterministic

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